- 2026年2月11日
歩いている、立っているとすぐに腰が疲れる、座りたくなる、70才からのその腰痛はサルコペニアかも?

皆様こんにちは。田所整形外科クリニック院長の丸野です。
「最近、腰が重だるくてシャキッとしない」
「少し歩くとすぐに腰が疲れて座りたくなる」
こんな慢性的な腰の不調は、年のせいだと諦めてしまいがちです。
しかし、その腰痛やだるさの裏には、単なる加齢ではなく、「サルコペニア(筋肉減少症)」や、それに伴う「骨粗しょう症性脊椎圧迫骨折」といった、整形外科的な疾患が潜んでいる可能性があります。
今回は、70歳以降の方によく見られる「歩行時の腰痛やだるさ」について、その原因と対策をお伝えします。
1. 「歩くとすぐに疲れる」その腰痛はサルコペニアの典型的なサイン

サルコペニアとは、加齢などが主な原因となり、筋肉の量と筋力、身体能力が低下した状態を指します。このサルコペニアは、高齢者の腰痛の大きな原因の一つとして知られています。
サルコペニアによる慢性腰痛の特徴
サルコペニアに伴う高齢者の筋萎縮による慢性腰痛は、特に75歳を過ぎた頃から見られ、以下のような症状が特徴的です。
- 歩行するとすぐに腰がだるく重い。
- 台所仕事などの短時間の立ち仕事でも腰が辛い。
- 5分も歩行すると臀部がダル痛くなり、直ぐに座りたくなる。
- 腰が曲がっていつも胃が圧迫される感じがする。
これは、体幹(背筋や腹筋)や下肢の筋肉が衰えることで、重力に抗って体を支える力が不足し、背骨周辺に過度な負担がかかり続けるために起こります。
2. サルコペニア対策の基本:悪循環を断ち切る

サルコペニアは、低栄養や活動不足などが重なることで悪循環(フレイルサイクル)に陥り、進行していきます。この悪循環を断ち切るためには、「栄養」と「運動」の両面からの介入が不可欠です。
運動:まずは筋力の「維持」と「強化」を
レジスタンス運動の重要性:サルコペニア対策として、筋肉に負荷をかけるレジスタンス運動(筋力トレーニング)が効果的です。特に下肢の筋力強化(スクワットや片足上げ膝伸ばしなど)は、歩行能力の維持と転倒予防につながります。
正しい姿勢を維持することの重要性:当たり前と思われるかもしれませんが正しい姿勢が最重要なのです。正しくは正しい姿勢を維持する努力、が重要なのです。まだ50~60才と言った年齢では実感がない方が大半だと思いますが、加齢とともに姿勢を維持することが出来なくなります。正しい姿勢を保てるということは筋肉を正しく使うことが出来ているのです。これらの正しい筋肉がうまく機能しなくなることによって数年間で筋委縮がすすみ脊柱(背骨)をしっかり支えることが出来なくなります。結果的に背中が円くなった姿勢(円背)で歩行を続けます。円背で歩行することは背骨を固定して歩くことなのです。すなわち脊椎の回旋運動が生じないために脊柱起立筋の萎縮が進みます。脊椎の回旋が生じないと骨盤運動も低下するため歩行の歩幅も小さくなります。これは膝が伸びない歩き方になり、ますます円背が増強し、かつ擦り足歩行となり転倒による骨折リスクが高まります。
歩行時に正しい姿勢が維持できるようには日頃から正しい姿勢を意識する、姿勢が変わる前に行う予防的リハビリが重要なのです。
予防の意識:痩せてしまった筋力を以前のように回復させることは困難ですが、筋委縮がが進行させないよういリハビリによる筋力維持とともに、歩行時のコルセットや押し車などの歩行補助具の使用が推奨されます。「痛み」を感じると動くことから遠ざかってしまうため、知らぬところで筋力低下が進行しているのです。歩けない、を放置するのではなく補助具を使ってできるだけ日常の歩行を維持することが最も重要なのです。
栄養:良質なタンパク質を意識的に
タンパク質:筋肉の形成・維持に不可欠なタンパク質を、1日に体重1kgあたり1.2~1.5g程度摂取することが推奨されます。特に、肉や魚などの良質な動物性タンパク質を避けないようにすることが大切です。
骨の栄養素:筋肉だけでなく骨の維持も重要であるため、カルシウムの吸収を助けるビタミンD(サケ、イワシ、キノコ類など)や、骨の形成をサポートするタンパク質の摂取も意識しましょう。
3. 「いつもの腰痛」の裏に潜む重大な骨折リスク

70歳以降で慢性的な腰痛や背中の痛みが続く場合、それは単なるサルコペニアによる筋力低下ではなく、骨粗しょう症による「脊椎圧迫骨折(いつの間にか骨折)」のサインかもしれません。
サルコペニアで筋力が低下していると転倒リスクが高まり、骨粗しょう症で骨がもろくなっていると、尻もち、重い物を持つ、くしゃみをする、椅子に勢いよく座るといった些細なきっかけで、椎体が潰れるように変形する骨折を起こしやすくなります。
圧迫骨折後の「隠れた課題」
圧迫骨折は、初期段階で痛みが軽く、「いつもの腰痛かな?」と見過ごされがちです。たとえ骨が治癒(骨癒合)した後でも、椎体が変形したまま固まる(変形治癒)ことで、以下のような「隠れた課題」が残ることが多いのです。
- 慢性的な重だるい痛みが遷延化する。
- 背骨の変形(円背)が進み、身長が縮む。
- 少し歩くと腰が重く座りたくなるなど、歩行能力が低下する。
こうした症状は、単なるサルコペニアの症状と混同されやすいですが、放置すると次の骨折(二次性骨折)のリスクを高め、寝たきりや生活レベルの著しい低下につながります。
ただし、人の体はサルコペニア、圧迫骨折後の円背、などで症状を明確に分類して治療することが困難(というより無駄)であることが多いのです。サルコペニアや圧迫骨折後の円背の方は最終的に同じ症状を訴えることが多いのです。つまり筋力低下に姿勢不良が加わると歩行を続けることが困難になっていくのです。
姿勢不良が始まる前の予防的な筋力訓練、圧迫骨折を生じさせない予防的な骨粗鬆症の検査と治療、圧迫骨折が生じてしまった後の継続的なリハビリ、の重要性に気づいて取り組むこと、が重要なのです。

4. 正確な診断と早期治療の重要性
「たかが腰痛」「年のせい」と自己判断せず、背中や腰の痛みが続く場合は、一度専門医(整形外科や脊椎専門医)にご相談ください。
早期発見の切り札:MRI検査
圧迫骨折や重度の腰痛が疑われる場合、X線検査だけでは骨折を明確に捉えられないことや、新しい骨折か古い骨折かを判断するのが難しい場合があります。
そこで重要となるのがMRI検査です。MRI検査は、骨折の有無や範囲の正確な特定、そして骨折が「新しい(急性期)」ものか「古い(陳旧性)」ものかを区別できるため、早期に治療方針を立てるための切り札となります。
また、脊柱起立筋の筋委縮の程度、もMRIでみることが出来ます。
当クリニックでは、MRI検査が必要と判断された患者様には、三宮にある連携医療機関「あんしんクリニック」をご紹介し、スムーズかつ早期に検査を受けていただける体制を整えています。
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治療とリハビリテーション

正確な診断が下されたら、治療は骨折やサルコペニアの状態に応じて進められます。
骨粗しょう症治療:骨折の最大の原因である骨粗しょう症の検査と治療を並行して行い、骨密度を改善するための薬剤(骨の吸収を抑える薬や、骨形成を促す注射薬など)を導入します。
リハビリテーション:骨癒合後も続く腰痛やだるさ、歩行能力の低下に対しては、リハビリテーション科での専門的な運動療法の介入が不可欠です。安静期間中に低下した体幹の筋力(腹筋、背筋)や下肢の筋力を回復させ、正しい姿勢や動作の習得、バランストレーニングを通じて転倒リスクを減らします。
また、円背や圧迫骨折後の腰のダル重い症状の改善については、低周波治療や水圧によるマッサージを行うウォーターベッドなどの物理療法を継続的に行うことで症状の改善が期待できます。加齢的要素も多いために「完全に直す」、といったことを最初の目標にするのではなく、「少し良くなって少し歩く距離が増えた!」といった日々を送ることで少しづつ改善がみられるのです。焦らずに一緒に頑張っていきましょう。

当クリニックでは、経験豊富な理学療法士が患者様の状態に合わせたオーダーメイドの運動療法を行い、早期診断からリハビリ、手術後の経過観察まで切れ目のない一貫した治療をサポートいたします。
神戸市灘区で70歳を過ぎて腰痛や歩行時のだるさにお悩みの方は、ぜひ一度、当クリニックにご相談ください。