- 2026年2月11日
- 2026年2月12日
その膝の痛み、もしかして「半月板損傷」かもしれません
-変形(加齢)と診断されたが本当にそうなの?と思っている方へ

膝の痛みは、外来患者様の訴えの中で腰痛の次に多い症状です。
「歳のせいだから仕方がない」「太っているから歩きなさい」と医師に言われて、膝の痛みを抱えながらも諦めてしまっている患者様が多くいらっしゃいます。確かに、膝の痛みの大半は加齢に伴う変形性膝関節症であることは間違いありません。
しかし、特に「突然」痛みが生じた場合や、レントゲンで「さほど変形がないの」にもかかわらず痛みが続いている場合は、その痛みの真の原因は変形性膝関節症ではない可能性があります。その際に強く疑われるのが、半月板損傷です。
1.変形性膝関節症(OA)の特徴と「見落とし」

変形性膝関節症は、加齢や肥満などが原因となり、膝関節の軟骨が弾力性を失って摩耗し、関節炎や変形が生じる疾患です。
変形性膝関節症の一般的な症状

初期症状は、椅子やベッドから立ち上がるときなど動作の開始時に生じる痛みで、しばらく休むと治まるのが特徴です。症状が進行すると、階段の昇り降りや歩行中も痛みを感じるようになり、末期には安静時にも痛みがとれなくなります。
見落としがちなポイント

膝の痛みを抱える患者様は、病院でレントゲン検査を受け、骨の変形を指摘されることで「加齢だからしょうがない」と落ち込んでしまうことが多いです。
しかし、レントゲンでさほど変形がない膝でも、「加齢による変形」と診断されているケースは多くあり、実はこの場合に膝半月板損傷も疑う必要があります。
半月板損傷や大腿骨内顆骨壊死は、発症の初期はX線上の変化が少ないため、誤って変形性膝関節症の初期と診断されている場合も多く見受けられます。
2.半月板損傷を疑うべきサインと症状
半月板は、大腿骨と脛骨の間にある線維軟骨で、膝の衝撃吸収、軟骨同士の適合性の維持、そして関節の安定性に寄与する重要な役割を担っています。
損傷の原因は半月板の変性変化

半月板損傷は、若年者ではサッカーやバスケットボールなど膝を回旋させるスポーツ外傷が原因となりますが、中高年者に関しては、立ち上がり時や無理な態勢で膝を捻った際の軽微な外傷で受傷するケースや、全くケガのきっかけが無くても疼痛が感じられ始めた、といったケースが多いのです。また時には「バチッ」と音が鳴ったと同時に膝裏から外側にかけて痛みが走った、という場合も多くあり、これはのちに説明する “半月板後角(後根)損傷” を生じている場合が多く、早期に変形性膝関節症に進行したり、大腿骨内顆骨壊死になってしまう場合が多く注意が必要です。これらの損傷の原因としては、40歳を超えると半月板に含まれる水分量が減少し、クッションとしての性能が落ち、わずかな衝撃でも損傷を受けやすくなるためです。この状態を “半月板の変性変化” といいます。
半月板損傷特有の症状

半月板が損傷した場合、単なる摩耗によるOAとは異なる、特徴的な症状が現れます。
- 突然の痛み: 突然痛くなった場合には、半月板損傷が強く疑われます。
- ロッキング: 断裂範囲が大きい場合、断裂半月板が関節内に嵌頓(飛び出して元に戻らない状態)し、急な激しい痛みと共に膝関節の伸展が不可能になる現象です。
このロッキング症状はインターネット検索などでよく出てくる典型的な半月板損傷と思われていますが、現実的には若者の半月板損傷にみられる症状でかつ頻度的に多いものではありません。私の経験からロッキング症状は中高年にはかなり少ない症状であり中高年の半月板損傷の診断の決め手にはなりません。
- 引っ掛かり感・クリック音: 膝の屈伸時に引っ掛かり感(catching)やクリック音(パキパキ音)がしばしばみられます。特に膝裏で 「バチッ」 と音が鳴る(もしくは衝撃を感じる)と同時に疼痛を感じた場合には “半月板後角(後根)損傷(断裂)” 、が生じている可能性が高いのです。しかし、正確な診断がなされていない場合が多いようです。これは初期のX線では異常が無く、かつMRIを撮影しても半月板後角部の損傷の診断が難しいためです。現時点では臨床経験が豊富な整形外科医にしか診断できないと思われます。しかし、この半月板後角(後根)損傷をきたした場合、急速に軟骨の変形が進行、もしくは骨の一部の組織までつぶれる大腿骨内顆骨壊死、に発展することが多いため初期に正確に診断し変形の進行を防ぐことが最も重要となります。「X線では大丈夫と言われた、でも痛みが取れない、歩けない」、と言った訴えで患者さんが来院されるのはこの半月板後角損傷が多いのです。
- 膝くずれ: 膝が抜けるような感覚(膝くずれ)が生じることがあります。これは半月板損傷が生じるとともに疼痛が生じ、膝の力が抜けてしまうことが多いのです。また痛い膝をかばいながら歩き続けていると踏み込むときに大切な大腿四頭筋に上手く力が入らなくなってしまい膝が抜ける(踏み込んだ瞬時に力が入らない)状態になります。
- 腫脹(水が溜まる): 外傷や捻挫により半月板が損傷し、炎症が生じた結果として、膝に水(関節液)が溜まることがあります。一般的に、水がたまり続け、かつ痛みが強い場合には軟骨の損傷が強いと考えられます。
- 夜間の安静時の痛み:半月板損傷が生じると急速に軟骨や骨に負担がかかり炎症が生じます。この場合には安静にしている夜間にもかかわらず痛みを自覚することが多くあります。炎症が強くなるとこのような夜間の痛みが生じるのですが骨髄内に炎症が波及するとこのような痛みが生じるとも言われています。
3. 早期の正確な診断が膝の未来を守る
膝の痛みの原因が半月板損傷であるか、変形性膝関節症であるかを正確に判断することは、その後の治療方針を決定し、将来的に変形性膝関節症への進行を防ぐために非常に重要です。
早期MRI検査の必要性

半月板損傷や靱帯損傷は、X線(レントゲン)では診断できないため、正確な診断にはMRI検査が必須となります。MRI検査は、靱帯や半月板の損傷状態、合併損傷の有無を詳細に確認できるため、診断の切り札となります。ただし、そのMRIをみて診断する医師の力も必要です。なぜなら、MRIにおいても半月板が損傷しているか否か、はっきりと判断しづらい症例も多くあるからです。このような場合にはMRI画像の他、触診や臨床症状を総合して「画像では不鮮明だがおそらく半月板損傷であろう」と推測的に判断し注意を促し慎重に経過を診る必要があり医師の経験が最も重要になります。
もし半月板損傷を放置し、膝関節の不安定性が続いた場合には、半月板のクッション機能が低下したままとなり、長期的には軟骨の摩耗が進み、変形性膝関節症に進行するリスクが高まります。
当クリニックの診断・治療体制

田所整形外科クリニックでは、膝関節の診療に精通した専門医が、患者様の膝の痛みの真の原因を早期に特定します。
的確な初期診断: 多くのスポーツ選手の治療経験がある院長が、徒手検査(Lachmanテストやマックマレーテストなど)を通じて的確な初期診断を行います。
迅速なMRI診断: MRI検査が必要と判断された場合、三宮にある連携医療機関「あんしんクリニック」をご紹介し、早ければ当日に撮影、診断ができるよう手配いたします。これにより、ケガの不安を長引かせることなく、早急に治療の方向性をお伝えします。
▶【MRI検査のご案内】あんしんクリニック連携で安心の診断
治療方針: ロッキングなどの重症例や保存療法で改善しない場合は、関節鏡手術(半月板縫合術や部分切除術)を検討します。特に血行のある辺縁部の断裂であれば、受傷後3週以内に縫合術を行うことが治癒に有利とされています。
手術が必要な場合には、院長が関連病院「あんしん病院」で執刀し、術後のリハビリまで切れ目のない一貫した治療を行います。
保存療法として、筋力強化のためのリハビリテーション、薬物治療も選択肢となります。
「たかが痛み」と自己判断せず、ご自身の膝の痛みが「変性」によるものなのか、「損傷」によるものなのかを正確に把握することが、健やかな未来を守る第一歩となります。膝の痛みや、膝のロッキング、引っ掛かり感でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。