• 2025年6月17日

「背中や腰の痛みが続く…」もしかして骨粗鬆症による圧迫骨折?早期MRI診断と治療が重要です

皆様こんにちは。
田所整形外科クリニック院長の丸野です。

「最近、なんだか背中や腰の痛みが続いているな…」
「ちょっとしたことで腰を痛めた後、どうもスッキリしない…」

そんなお悩みをお持ちではありませんか? もしかすると、その症状は単なる腰痛ではなく、「骨粗鬆症(こつそしょうしょう)」が原因で起こる「脊椎圧迫骨折(せきついあっぱくこっせつ)」、いわゆる「いつの間にか骨折」のサインかもしれません。

今回は、この見過ごされやすい圧迫骨折について、そして早期発見・早期治療がいかに大切かをお話しします。


圧迫骨折とは?なぜ気づきにくいのか?

脊椎圧迫骨折とは、背骨を構成している「椎体(ついたい)」という部分が、主に上下からの力によって押しつぶされるように変形してしまう骨折のことです。特に高齢の方、とりわけ骨粗鬆症で骨がもろくなっている方に多く見られます。
驚かれるかもしれませんが、この骨折は必ずしも大きな事故やケガが原因となるわけではありません。

  • 尻もちをついた。
  • 重い物を持ち上げた。
  • くしゃみをした。
  • 布団の上げ下ろしや、長時間の中腰での作業。
  • 椅子に勢いよく座った。

といった、日常生活の中の些細なきっかけや、時には明らかな原因が思い当たらない場合でも起こりうるのです。これが「いつの間にか骨折」と呼ばれる所以です。


圧迫骨折の主な症状

・寝返りをうつ、起き上がる、立ち上がる、前かがみになるなど、体を動かした時に背中や腰に鋭い痛みが生じる(体動時腰痛)
・体を動かさなければ痛みは少ない、あるいは、感じない
・骨折した部分を押すと痛みがある
・痛みが軽く、気づかないまま生活していることもある

症状が軽い場合や、もともと腰痛持ちの方は「またいつもの腰痛かな?」と見過ごしてしまいがちです。しかし、この「見過ごし」が、後々大きな問題につながることがあります。


診断の重要性:なぜX線(レントゲン)だけでは不十分なのか?

圧迫骨折が疑われる場合、まずはX線検査を行うのが一般的です。しかし、骨折がごく初期の段階であったり、椎体の変形がわずかであったりすると、X線写真だけでは骨折を明確に捉えられないことがあります。また、過去に起こった古い骨折なのか、今回新たに生じた骨折なのかをX線だけで判断するのは難しい場合も少なくありません。そのうえ、ご高齢の方の腰椎X線画像は椎体の輪郭がかなり薄く、また腰が曲がっていることから陰影が重なることも多くかなり見づらい点も圧迫骨折を見逃す原因です。

診断が遅れたり、見過ごされたりするとどうなるでしょうか?

  • 最初の痛みは軽減したものの重だるい痛みが慢性化する。
  • 数分間立っていると腰がだるくて座ってしまう。少し歩くと腰が重く座りたくなる。
  • 背骨の変形が進み、背中が丸くなる。(円背 えんぱい)
  • 身長が縮む。
  • 潰れた椎体が神経を圧迫し、足のしびれや麻痺、排尿障害などを引き起こすことがある。
  • 内臓が圧迫され、呼吸機能や消化器機能に影響が出ることも。

こうした深刻な後遺症を防ぐためには、早期に正確な診断を下すことが何よりも大切です。


早期発見の切り札:MRI検査の役割

そこで重要になるのがMRI検査です。MRI検査は、X線では分かりにくい微細な骨折や、骨の中の状態を詳しく描き出すことができます。

MRI検査でわかること

  • 骨折の有無と範囲の正確な特定: X線で見逃されるような初期の骨折も鮮明に捉えます。
  • 骨折の新鮮度の判定: これが非常に重要で、骨折が「新しい(急性期)」ものか「古い(陳旧性)」ものかを区別できます。新しい骨折であれば、積極的に治療を行うことで骨癒合を促し、痛みの軽減や変形の進行を抑えることが期待できます。
  • 神経への影響の評価: 潰れた骨が脊髄や神経根を圧迫していないかを確認できます。
  • 他の病態の鑑別: まれに腫瘍などが原因で骨折が起こることもあり、その鑑別にも役立ちます。

「正確な診断が良い治療につながる」というのは医療の原則です。圧迫骨折においては、早期のMRI検査がその第一歩となると言えるでしょう。


適切な治療とは?

MRI検査などで新しい圧迫骨折と診断された場合、適切な治療を早期に開始することが重要です。

主な治療法

1.保存的治療

  • 安静: 骨折部が安定するまでの数週間は、無理な動作を避けます。
  • コルセット療法: 特殊な硬めのコルセット(装具)を作成し装着することで、背骨を安定させ、痛みを和らげ、変形の進行を防ぎます。
  • 薬物療法: 痛みを抑えるための消炎鎮痛薬などを使用します。

2.骨粗鬆症の治療

圧迫骨折の最大の原因である骨粗鬆症の治療は、骨折の治療と並行して、あるいは骨折治療後も継続して行うことが極めて重要です。骨密度を改善し、骨を強くする薬(骨の吸収を抑える薬、骨の形成を促す薬など)を使用することで、今回の骨折の治癒を助けるだけでなく、将来起こりうる新たな骨折(再骨折)を予防する効果が期待できます。特に、骨癒合を促進する作用を持つ骨粗鬆症治療薬を早期に導入することが望ましいと考えられています。

3.手術療法

保存的治療で十分な効果が得られない場合や、痛みが非常に強い場合、神経症状が出現している場合には、潰れた椎体の中に医療用のセメントを注入して安定させる手術(BKP:バルーン椎体形成術など)や、金属製の器具で背骨を固定する手術が検討されることもあります。


当院でのMRI検査について:三宮あんしんクリニックとの連携

当クリニックでは、より精密な検査を通じて的確な診断を行うために、必要に応じてMRI検査を推奨しております。MRI検査は、強力な磁石と電波を利用して体内の詳細な断面像を得る検査方法で、X線を使用しないため放射線被ばくの心配がありません。特に整形外科の分野では、レントゲン検査だけでは評価が難しい骨の内部の状態、軟骨、椎間板、靭帯、腱、筋肉、さらには神経といった軟部組織の異常や、微細な骨折、炎症、腫瘍などの診断に非常に有効です。これにより、より正確な治療方針を立てることが可能になります。

MRI検査が必要となった場合の当院からのご案内

当クリニックでは、MRI検査が必要と判断された患者様には、三宮にございます連携医療機関「あんしんクリニック」をご紹介し、スムーズに検査を受けていただけるよう手配いたします。

検査までの大まかな流れ

1.当クリニックでの診察・予約: 医師がMRI検査の必要性を判断した場合、当クリニックのスタッフが「あんしんクリニック」の検査予約をお取りします。

2.問診票のご記入: MRI検査を安全かつ正確に行うため、当クリニックにて事前にMRI検査専用の問診票にご記入いただきます。この問診票では、心臓ペースメーカーの有無、手術歴(体内の金属の有無)、妊娠の可能性など、検査の可否に関わる重要な項目を確認させていただきます。ご不明な点はスタッフにお尋ねください。

3.ご紹介と資料のお渡し: ご記入いただいた問診票と当院からの紹介状を専用の封筒に入れてお渡しします。検査当日は、この封筒を必ず「あんしんクリニック」へご持参ください。

「あんしんクリニック」での検査当日

  • 原則として、ご予約いただいた検査時間の30分前に「あんしんクリニック」へご来院ください。
  • 受付にて、当院からお渡しした封筒をご提出ください。
  • MRI検査の撮影時間は、検査部位や内容にもよりますが、概ね20分~30分程度です。(検査中は工事現場のような大きな音がしますが、ヘッドホンなどで対応いただけます。)
  • 検査当日、「あんしんクリニック」の窓口でのお会計は発生しません。

検査結果とご精算について

検査データと読影レポートは「あんしんクリニック」から当クリニックに送付されます。後日、当クリニックの診察にて、医師から直接、検査結果を詳しくご説明いたします。その際に当クリニックの窓口にて、検査費用につきましてもまとめてご精算いただきます。

当クリニックは、「あんしんクリニック」と緊密に連携を取り、患者様が安心して質の高いMRI検査を受け、その結果に基づいた最適な治療へと進んでいただけるよう、全力でサポートさせていただきます。MRI検査やご紹介の流れに関して、ご不明な点やご心配な点がございましたら、どうぞご遠慮なく当クリニックのスタッフにお気軽にお声がけください。


自己判断せず、まずは専門医へ。早期診断が健やかな未来を守ります

「たかが腰痛」「年のせいだから」と自己判断せず、背中や腰の痛みが続く場合は、一度専門医(整形外科や脊椎専門医)にご相談ください。特に、骨粗鬆症の治療を受けている方や、閉経後の女性、ご高齢の方は注意が必要です。

早期にMRI検査など適切な検査を受け、正確な診断のもとに治療を開始すれば、つらい痛みや将来的な後遺症のリスクを大きく減らすことができます。皆様が健やかな毎日を送れるよう、この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。

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